長く大切に使い継ぐ暮らし 長く大切に使い継ぐ暮らし

壊れてしまった思い出の品物、いつしか傷んでしまった壁や床。
これからも大切に使い続けるために、自分でできる修理・修繕の方法をご紹介します。

自分の手で直すほどに、新しい思い出が刻まれる

気に入って購入した商品や友人からのプレゼントなど、愛着のあるものがもし破損したら…。それを自分の手で直すができたら、さらに愛着がわき、魅力的になることでしょう。
器や衣類、そして家の扉や床など、身近なものの多くは、意外と自分の手で直すことができます。大切に使い継ぐことで、心が豊かになる暮らしを始めませんか? 

花瓶を金継ぎしてより愛着のわくデザインに

うっかり割ってしまった焼き物の器は、漆と金粉で繕う「金継ぎ」によって、新たな魅力を持った器によみがえります。
花瓶など、食品に直接触れない焼き物なら、手軽な「簡易金継ぎ」でも美しく修繕可能です。接着剤や漆の代用品「新うるし」などを使うので、漆かぶれの心配がほとんどなく、本格的な金継ぎよりも少ない材料で挑戦できます。

株式会社M&I/リペアアーティスト
田村 昇平さん
陶器や家具、美術工芸品などの修理・再生・復元を行うM&Iに勤務。主に金継ぎを担当している。

割れた花瓶に簡易金継ぎを施す

用意するもの

※〈3〉〈9〉〈10〉は必要に応じて用意する

①サンドペーパー(初心者は1000番手以上の目の細かいものがおすすめ) ②カッターナイフ 〈3〉マスキングテープ(破片を仮止めする場合) ④ 金属粉(ここでは真ちゅう粉) ⑤新うるし ⑥エポキシ系接着剤(2液式、通常ヘラは付属。硬化時間は5~10分程度のものがおすすめ) ⑦細筆 ⑧エポキシパテ(硬化時間は10分程度のものがおすすめ)〈9〉エタノール(手に付いた接着剤などを拭き取るため)〈10〉ティッシュペーパー

1.破片と本体を合わせてみる

破片と本体を手でつなぎ合わせ、接着箇所を確認する。
破片が複数ある場合は、破片同士を合わせて、どことどこがつながるかを確認し、覚えておく。

2.接着剤を断面に塗る

接着力が強いエポキシ系の接着剤2液を、付属の説明書に従って混ぜる。破片と本体、両方の断面に接着剤をたっぷり塗り、固まるまで手でしっかりと押さえる。

ワンポイントアドバイス
硬化時間が5分程度の接着剤がおすすめ

硬化時間が長すぎると、後の工程で手で押さえ続けるのが辛くなります。とはいえ、短すぎても接着に失敗する可能性があるので、5分程度で硬化する接着剤がおすすめです。

3.はみ出した接着剤を削る

接着剤がしっかりと固まったら、カッターナイフを使ってはみ出した接着剤を削り取る。
表側だけでなく、裏側や側面など目に見えないところも、削り忘れないように注意。

ワンポイントアドバイス
接着剤が乾きにくい時は熱を加える

接着剤の性質上、気温が低いと硬化が進みにくくなります。使用した接着剤の硬化時間を過ぎてもくっつかない場合は、ドライヤーなどで熱を加えると硬化が早まります。

4.エポキシパテで隙間を埋める

割れた際に破片を紛失して欠けや隙間ができたときは、エポキシパテをこすり付ける。
ただし、あまり付けすぎないように、段差や隙間がなめらかになるように埋める。

5.はみ出したパテを削る

サンドペーパーで余分なエポキシパテを削る。力を入れすぎると花瓶自体に傷が付くので、1000番程度の目の細かいサンドペーパーで撫でるように研磨する。

6.新うるしに金属粉を混ぜる

新うるしを適量取り、金属粉(ここでは真ちゅう粉)を少しずつ加えて混ぜ合わせる。むらがない金色になったら、細筆でチラシの裏紙などで試し書きをしながら筆先を整える。

7.つなぎ目に新うるしを塗る

金属粉と混ぜた新うるしをつなぎ目に塗る。初めは細く塗り、好みに合わせて少しずつ太くしていく。裏側や側面も同様に。24時間ほど動かさないでおき、乾いたら完成。

8.完成

漆を使った本格的な金継ぎで割れた食器を修繕

皿やカップなど、食品に直接触れるものを修繕するときは、漆を使って接着する本格的な金継ぎを施します。古くから用いられてきた技法で、材料や工程が多く、時間もかかりますが、仕上がりや耐久性は抜群です。

用意するもの

①サンドペーパー ②マスキングテープ ③にかわ(卵白で代用可) ④片脳油(へんのうゆ) ⑤テレピン油 ⑥生漆(きうるし) ⑦黒呂色漆(くろろいろうるし) ⑧弁柄漆 ⑨ティッシュペーパー ⑩強力粉 ⑪砥の粉(とのこ) ⑫木粉 ⑬コンパウンド ⑭重し ⑮木地呂漆(きじろうるし) ⑯ヘラ ⑰筆(金粉を払い落とす用途) ⑱細筆 ⑲鯛牙(煮付けなどに使った鯛からとった牙を棒に取り付けたもの。なければ、専用のメノウ棒でも良い) ⑳粉筒 ㉑金粉 ㉒ガラス板

1.破片と本体を合わせてみる・面取りをする

破片同士を手でつなぎ合わせ、どことどこがつながるかを確認し、覚えておく。

断面の角が丸くなるように、荒めのサンドペーパーで削る。ミニルーター(100円均一ショップで購入可能)があると便利。
その後、陶器の場合は、漆が染み込みすぎてしまうため、断面に膠(または卵白)を塗り1〜3日乾かす。

2.むぎうるしをつくって、破片同士をつなぎ合わせる

ガラス板の上で強力粉と水を1:1の割合で混ぜ合わせ、耳たぶくらいの硬さになるまで練る。
これに生漆を少しずつ足し、溶けたチョコレートのような硬さになるまで練り合わせると、「むぎうるし(むぎうるし)」ができる。

ムラがないようにしっかりと混ぜ合わせる。

接着箇所の両方の断面にむぎうるしをたっぷりと塗る。

破片同士を合わせる。
ガラス板に残ったむぎうるしは保存できないので、テレピン油とティッシュペーパーできれいに拭い取る。以降の工程でも、残った漆は同様に拭い取る。

3.漆が硬化するまで、湿度を保ちながら保管する

マスキングテープで破片同士をしっかりと固定する。

衣装ケースやプラスチック製の保存容器などの密閉できる容器に入れ、フタをする。水を入れたコップや、湿らせたスポンジなどを一緒に入れて、高い湿度を保ちながら、1〜2週間程度動かさないでおく。

4.はみ出した漆を削り取る

爪楊枝などで漆を突つき、しっかりと固まったことを確認したら、テープを剥がす。はみ出したむぎうるしをカッターナイフの背で削り取る。

サンドペーパーを使って、漆をならす。
力を入れすぎると皿自体に傷がつくので、1000番程度の目の細かいサンドペーパーで撫でるように研磨する。

5.木屎漆で隙間を埋める

接着箇所の隙間やカケ部分を埋めるために、錆漆(さびうるし)と木屎漆(こくそうるし)をつくる。
錆漆は砥の粉、水、生漆を1:1:1の割合で混ぜたもの。
木屎漆は、工程2と同様にしてつくったむぎうるしに、木粉を1:1の割合で混ぜたもの。

接着箇所の隙間など、細かな補修には、錆漆を刷り込む。

カケ部分など、大きな補修箇所には木屎漆をのせる。
隙間やカケを埋めたら、3と同様に密閉容器で湿度を保ちながら1〜2週間保管する。

6.黒呂色漆を塗る

漆が固まったことを確認したら、細筆を使い、黒呂色漆を補修箇所全面に塗る。
3と同様に密閉容器で湿度を保ちながら1〜2週間保管する。

黒呂色漆が固まったことを確認したら、1000番程度の目の細かいサンドペーパーで撫でるように研磨する。
塗りムラがあるようなら、6の工程を2〜3回繰り返す。

7.弁柄漆を塗る

細筆を使って、補修箇所に弁柄漆を薄く塗る。30分程度放置し、弁柄漆を生乾きの状態にする。
「はー」と息を掛けたときに、一瞬だけ漆表面が曇るのが目安。

8.金粉を蒔く

金粉を粉筒に入れる。
金粉の包装紙は薄く軽いため、風で吹き飛びやすい。あらかじめ用意した重しで、包装紙を押さえながら作業する。

粉筒に入れた金粉を、生乾きの弁柄漆を覆うように振りかける。

余分な金粉を筆で払い落とす。払い落とした金粉は繰り返し使えるので、回収して、もとの包み紙に戻す。
数分放置し、金粉が足りていなければ、再度金粉をふりかけ、払い落とす。
3と同様に密閉容器で湿度を保ちながら1〜2週間保管する。

9.木地呂漆で「粉固め」をする

少量の木地呂漆をガラス板に出し、テレピン油か片脳油を細筆で少しずつ混ぜながら希釈する。漆の色が薄っすらと残る程度が目安。

金粉が剥がれ落ちないように、希釈した木地呂漆で「粉固め」をする。
木地呂漆を含ませた細筆で、金表面を湿らせる。このとき、こすると金粉が剥がれてしまうので、細筆で表面に触れるだけにして、こすらないこと。
ティッシュを軽く当てて、余分な漆を吸い取り、3と同様に密閉容器で湿度を保ちながら1〜2週間保管する。
9の工程をもう一度繰り返す。

10.鯛牙で金表面を磨く

漆が固まったことを確認したら、鯛牙のなめらかな面で金を磨く。

11.完成

補修箇所全面を磨いたら完成。

より光沢をもたせたい場合は、コンパウンドなどで磨いても良い。ただし、やりすぎると金が剥がれてしまうので注意。

裏側も美しい。
金継ぎした器は、電子レンジでは使わないこと。また、食洗機やクレンザーなどを使用すると金が剥がれる可能性があるため避ける。

※監修の田村さんは左利きです。また、ここで紹介している簡易金継ぎは、安全面から食器への適用は推奨されていません。食器の場合は、本金継ぎで修繕してください。簡易金継ぎによる修繕は、M&Iでは受け付けていません。

つぎはぎとは違う味わい増すダーニング

靴下やセーターなどのニット製品は、薄くなったり穴が開いたりと綻びやすいもの。「ダーニング」なら飾り付けながら補強でき、新たなデザイン性をもった世界でひとつのアイテムに生まれ変わります。
数ある技法のうち、今回は生地が薄くなってしまった箇所に最適な、「ハニカムダーニング」をご紹介。ニット製品に加え、ジーンズなどの布製品も修繕可能です。

テキスタイルデザイナー
野口 光さん
ダーニングの第一人者。世界各地でテキスタイル関連の活動を幅広く行っている。

薄くなった靴下をダーニングで補強する

用意するもの

①ダーニングマッシュルーム ②刺し子糸 ③毛糸(極細) ④毛糸(並太) ⑤刺繍針 ⑥糸切りばさみ

ここでご紹介している糸類は一例。素材、太さ、色を変えたほうが味わい深くなる。1本あたり50cm程度に切り、繕う範囲に応じて継ぎ足して使用する。

1.靴下をかぶせ補修箇所を確認

靴下をダーニングマッシュルームに履かせるようにかぶせ、薄くなっている部分を中央に持ってくる。細い首の部分に輪ゴムを掛けて靴下を固定する。

2.補修箇所の輪郭を囲うように縫う

50cm程度に切った糸を針に通し、補修箇所の約5mm外側を、反時計回りに「半返し縫い」で輪郭を囲う。「ひと針すくい、半針分戻ってまたひと針すくう」を繰り返す。

3.ひとつずつ網目をつくる

1周したら、輪郭から内側に向かい針で5mmすくい、針の先端に左回りに糸を掛ける(1)。針を引っ張ると、網目がひとつ完成。これを左へ5mm間隔で繰り返す(2)。

4.糸が短くなったら別の糸を継ぎ足す

糸の残りが約10cmになったら、針から糸を抜く。新しい糸を針に通し、続きから始める。
最初は古い糸(緑)、次の目以降は新しい糸(青)を針に掛け、3と同様に進める。

5.1段目を閉じて、2段目にすすむ

1周目の最後は、最初の目の縦糸に針をくぐらせて、1段目を閉じる(1)。5mm左の1段目の網目の横糸に針をくぐらせ、3 と同じように網目をつくり、2段目に進む(2)。

6.3段目、4段目……と網目をつくる

全面を覆うまで、3 ~ 5 を繰り返す。

7.全面を覆ったら網目を閉じる

最後は中心に近い縫い目に針をくぐらせる(1)。靴下をダーニングマッシュルームから外し、糸が出ている箇所のそばから、裏に糸を通す(2)。

8.飛び出した糸を始末する

靴下を裏返し、4~5つの縫い目に針をくぐらせ、糸を短く切る(1)。
飛び出したほかの糸も再度針に通し、同様に。

ワンポイントアドバイス
隣り合った糸は同時に始末

糸を継ぎ足した箇所は、2本隣り合って糸が飛び出しています。この場合、2本一緒に針穴に通していっぺんに処理すれば、糸始末の時間を短縮できます。

9.完成

色とりどりの糸でできた緻密な網目が完成。履き心地も問題ない。
裏側(写真右)も花火のようで可愛らしい。

住まいをいたわることで暮らし豊かに

愛着のあるヘーベルハウスだからこそ、自分のできる範囲で、修理・修繕したいと思う人は多いはず。長い時間をともにする家をいたわることは、丁寧に暮らし、人生を大切にすることでもあります。
閉まりにくくなった扉や滑りが悪くなった引き戸は、部品の交換で改善できます。床や壁の傷も便利な道具できれいに。ご自身でできることは意外と多いのです。

旭化成ホームズ株式会社
アフターサービス推進部
児玉 栄成
新築の工事管理を16年経験した後、アフターサービスに20年以上携わる。
後進育成にも従事。

扉のラッチケースを交換する

用意するもの

①ラッチケース(【商品番号】30811 など) ②ドライバー(プラス・マイナス) ③六角レンチ(レバーハンドルの種類によっては不要) ④テレホンカードなど薄くて丈夫なカード類
扉の閉まりが悪くなったり、ハンドルの戻りが悪くなったら、ラッチケースの交換時期です。組み立てなどの複雑な作業は必要なく、家庭にある道具だけで、簡単に交換できます。

交換部品のラッチケースは、ヘーベルハウスを建てた年次や構造によって種類が異なりますので購入前に確認が必要です。ご不明な点はヘーベリアンセンターへお問い合わせください。

滑りの悪い戸車を交換する

用意するもの

①プラスドライバー ②割り箸 ③ピンセット ④雑巾 ⑤シリコーンスプレー(【商品番号】20001) ⑥新しい戸車(交換の場合、【商品番号30804】 など

滑りの悪い引き戸は、戸車に絡まったゴミやホコリを取り除いてシリコーンスプレーを吹き付けましょう。それでも改善しなければ、新しい戸車に交換するだけで、引き戸の開閉がラクになります。

※交換部品の戸車は、ヘーベルハウスを建てた年次や構造によって種類が異なりますので購入前に確認が必要です。ご不明な点はヘーベリアンセンターへお問い合わせください。

床の傷を目立たなくする

用意するもの

①イージーリペアキット/ライトまたはダーク(【商品番号】40140、40141) ②木目描きペン(【商品番号】40143)
5mm程度の小さな床の傷は、熱で溶けるタイプの補修材で埋めて、専用のペンで木目を描き込めば目立たなくなります。何度でもやり直しが可能なので、失敗を恐れる必要はありません。

壁紙の剥がれ、画鋲跡を修繕する

用意するもの

①クロス用コーキング材 ②雑巾 ③壁紙用ローラー(剥がれの場合。なければぞうきんで軽く押さえる)
壁のクロスの角や継ぎ目の剥がれ、画鋲で開いた穴は、市販のコーキング材で修繕可能。ノズルから直接、コーキング材を塗り、はみ出したところを雑巾で拭い取れば見違えるようになります。

紹介している道具や交換部品等は、以下からご購入いただけるものもございます。

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